AID 出自を知る権利の現状と課題
最近、子供の運動会やら行事が多く、バタバタしてしまい、
中々更新出来ずに申し訳ありません。
AID(非配偶者間人工授精)を検討する際に耳にする、
『出自を知る権利』についてまとめてみます。
お恥ずかしながら、私も漠然としか頭に入っていなかったので、
手持ちの資料やネットの情報を元に私個人の考えを織り交ぜまとめています。
出自を知る権利とは
出自を知る権利とは・・・
「自分がどのようにして生まれたのか」そして
「自分の遺伝的ルーツはどこにあるのか」を知る権利のことです。
AIDで産まれた子ども達にとっての『出自を知る権利』とは、
つまるところ、
”AIDで産まれた子供自身が、
精子提供をしてくれたドナーさんが誰なのか”、を知る権利です。
『出自を知る権利』は2段階に分けることができます。
- 親が子供に告知をする段階
- 医療者側から、精子提供者についての情報を開示してもらえる段階
上記の2つです。
2つが達成されてこそ、子供の出自を知る権利が保証されるのです。
諸外国には、出自を知る権利を法律で認め、
精子提供者を開示できるようにしている国もあります。
ただ、親の子供に対する告知までは義務化するのが難しい為、
親が子ども達に告知をしやすい環境を作ることも課題とされているようです。
日本でも告知をする動きが年々高まってきてはいます。
ただ、どのように告知をするのかといった情報がまだまだ少ないのが現状です。
出自を知る権利を保証するためにも、AIDパパ・ママ達が互いに気軽に情報交換出来るような世の中にしていく必要がありますね!
すまいる親の会では、年に1度ほどすまいるキッズの会というのが開催されるようですので、タイミングが合えば参加してみるといいと思います。
そしてゆくゆくはこのブログも皆さんを繋ぐきっかけにしていけたらいいな、とも思っていたりもします!!
出自を知る権利を巡るこれまでの経緯
1949年に日本で初めてAIDが行われました。
しかしその頃は周囲にも子供にもAIDの事実を隠し通す事が
家族の幸せに繋がると信じられており、
そもそも子供にAIDの告知はしないべきだとして医者がAID患者に伝えていました。
そんな時代ですので当然精子提供者が誰かというのも匿名で何も問題がないと考えられていたのでしょう。
しかし、AIDで産まれ告知を受けずに育った方達が、予期せぬタイミングで自分がAIDで産まれた事実を知ることが度々起こりました。
そしてそういったAIDで産まれた方達が、自分の精子提供者が誰か分からないこと=自分のルーツが分からないことに対して非常に苦しんでいらっしゃるという事実が背景にあり、出自を知る権利を保証すべきだという議論が度々行われるようになりました。
しかし、精子提供者の情報を開示する動きが出始めたことで、精子提供者の数は減少の一途をたどっています。
結果私が治療をしていた8年前には、
海外でのAID治療など聞いたことがなかったのですが、
最近では多くの方が日本での治療を諦めて海外に渡っていらっしゃいます。
(とはいえ、まだ探せばAIDを国内で出来るところもあると治療されている方から伺いました。一度確認されるのをおすすめします。)
ちなみに、出自を知る権利を法律で認めた諸外国では、
精子提供者の数が減少した後、また落ち着くと増加していったとも聞くので、
日本もそのように動いていくことを願うばかりです。
日本での『出自を知る権利』の現状
では、日本で『出自を知る権利』は現在どのような位置づけにあるのでしょうか。
それぞれの機関での見解をまとめてみました。
子どもの権利条約 7条には、以下のように出自を知る権利を出来る限り有すると明言されているとAIDの資料にあったので、7条を調べてみました。
すると、
⚫第7条 児童は、(中略)できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。
とあります。
ここで言う『父母』が、精子提供者の事も指すのか、これはちょっと難しいところだなと個人的には思いました。
遺伝的には確かに精子提供者は父親ですが、私達の感覚としてはドナーさんは父親とはちょっと違う。
しかもこの条約はAIDの事例を考慮に入れずに作られているでしょうし・・・。
厚生労働省の報告書
日本では、2003年に厚生労働省の審議会で、下記のような報告書をまとめましたが、法制化するまでには至らず、実行されるには至っていません。
- 精子などの提供者の個人情報を公的機関で80年間保存する
- 子は15歳になると情報の開示を請求することができる
- 開示によって予想される問題や影響について、公的機関は当事者からの相談に応じ、説明する――など
日本産婦人科学会
日本産科婦人科学会の見解はどうでしょうか。
「提供者のプライバシー保護のため精子提供者は匿名とする(ただし記録は保存)」という見解です。
慶應大学も以前は記録を一定の期間で破棄していたようですが、最近は記録の保存は行っていると以前ニュースで見ました。
他の病院も同じように保存だけはされているのでしょうか、そうだといいですが。
話を戻します。
結局『出自を知る権利』についてそれ以上の動きは起こらず放置されています。
『出自を知る権利』を保証すべきだという考えは一般化してきてはいますが、
法律で認められてはおらず、
日本産婦人科学会で正式に認められているAID実施病院では、
ドナーはどこも匿名になっているのが現状です。
ところで、AIDの勉強会で聞いた事、周囲の話、養子の方の情報等をまとめると、
告知を受けて育った場合と、告知を受けずに育った場合(のちに予期せずタイミングで事実を知ってしまった)を比べると、
告知を受けて育った子供は、精子提供者を知りたいと思う度合いが弱い傾向にあるようです。
とはいえ、告知を受けて育った方で精子提供者を知りたいとの思いで情報発信されている方も海外にいらっしゃると聞きました。
精子提供者の情報開示が認められることは、DI児(AIDで産まれた子供)にとってメリットしかありません。
必要なことであるのは間違いありません。
精子提供者情報を知りたくないと思うDI児の方は、知らないままでいるという選択肢も認められているのですから。
知るか知らないままでいるかは本人の意思に任せられています。
出自を知る権利の保証(告知+精子提供者についての情報開示の法制化)が進むよう私達親も働きかけていく必要がありますね・・・。
そして、今AIDを検討されている方は、現状を踏まえた上で AIDで産まれた子供を幸せにしてゆけるか、ゆっくりと自分たちなりの答えを考えてみるのが良いかもしれません。
現状の中で出自を知る権利の認められたAIDを望むなら
余談ですが、出自を知る権利のあるAIDに進みたいとなると、
- 海外精子バンクの利用
- 個人ドナーさんの利用
- 身内間AID
という選択肢があります。
が、
海外精子バンクの場合は日本人ドナーさんが少ないため子供のルーツの問題が複雑になったり、
個人ドナーさんの場合は後ろ盾がないので信頼出来る方でないとリスクがあったり、
身内間AIDだと家族内の複雑な関係性だったり、
考えるべき問題もあります。
結局は何を選択しても、考えるべき問題はあるのが現状なので、
ご夫婦で納得ゆくまでしっかり悩んで進む道を選ぶことが大切ですね。
長くなってしまいましたが、お読み頂きどうもありがとうございました。
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